UCLA卒の女性ミュージシャン兼起業家にみるマーケット感覚の重要性と人生の意味

UCLA卒の女性ミュージシャン兼起業家にみるマーケット感覚の重要性と人生の意味

So, carry on, There’s a meaning to life.
「人生には意味がある、そう、だから俺たちはやっていくんだ。」
                      -Andre Matos/ex Angra

音楽における歌詞の重要性をさほど感じていない著者ではあるが、この詩には唯一感銘を受けた。
*ブラジルのメロディアスなメタルバンドの名曲なので、気になる方はコチラからご視聴下さい

人生には意味がある。なんと素晴らしい一節ではないか。普段ウィットに富んだジョークを交えながらモノを発信する著者であるが、今回は真面目に人生とは、キャリアとはといった概念について話をしていこうと思う。

お相手は和楽器×ロックをコンセプトにバンド活動をしているAKARAのMIKIKO MORIさん。

今回なぜこちらのテーマで彼女をお呼びしたかというと、彼女の持つ稀有なキャリアパスこそ正に「音楽×キャリア」という著者が最も関心を寄せる分野にマッチしており、是非とも”人生本当はやりたいことがあるくせに夢が非現実的過ぎて人に言うとバカにされるしそもそも自分には出来ないと決めつけて終日ベッドでスマホいじってグダグダしている読者”にこそ読んでもらいたいと思ったからだ。

帰国子女〜海外大入学〜事業会社就職〜ミュージシャン&起業家の道へ

大浜編集長「今日はよろしくお願いします。ではまず初めに、MIKIKOさんのこれまでの人生全体のキャリアパスを教えてください。」

MIKIKOさん「よろしくお願いします。ざっくり言うとこんな感じですね。」

—————————————————–

  • 幼少期に親の仕事の都合でアメリカ、カナダ、ハワイなどで生活経験有り
  • 中学@日本:Bon Jovi好きの親の影響でバンド開始(Vo&Key)
  • 高校@日本:バンド漬け(Vo)でX,B’z,LA’rc~en~Ciel,LUNA SEAなどをコピー
  • 大学@米国:UCLAにて和楽器に目覚める
  • 会社@日本:大手化学メーカーで新規事業開発担当、海外出張多数経験
  • ミュージシャン&起業家@日本:和楽器×ロックのバンド「AKARA」結成。自らマネジメント事務所も設立。

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大浜編集長「有難うございます。MIKIKOさんは帰国子女だったんですね。まずやはり目を引くのはUCLAですが、どうしてこちらに進学されたんですか?」

MIKIKOさん「(幼少期からの海外生活を経て)アメリカが好きだったからですね。あとは、現地LAで一番有名だったから。親にも『折角留学するのなら頭の良いところに行け。それが無理なら帰国しろ。』と言われていたので、『だったらやってやろうじゃんか』と。とにかく日本に連れ戻されたくなかったので(笑)」

大浜編集長「なるほど、それで明言通りキチッと達成しているのが凄い。そこでの4年間はいかがでしたか?」

アメリカで日本、ひいては世界の楽器文化に触れ、和楽器にのめり込む

MIKIKOさん「周りの生徒も先生も天才ばかりで驚きました。。私の専攻は国際政治・人文系でしたがそれとは別に誰でも取れるカリキュラムがあって、そこで世界の楽器について学べる講義があり和楽器と出会いました。アメリカで(笑)」

大浜編集長「日本の大学にも全学カリキュラムがありますが(僕も音楽史とか受講してました。)、海外で日本の和楽器の講義があるとは、、」

MIKIKOさん「はい、さすがに有名校だけあって講師もハリウッドの映画監督とかグラミー賞受賞者など一流どころばかりで、そこでその音楽の講義の先生に言われたんですよ『あなたはなぜ日本人という特徴を持っておきながら和楽器をやらないの?』と。その時ですね、私の中でスイッチが入ったのは。」

大浜編集長「今のバンドのルーツが海外での先生の一言からっていうのは面白いですね。」

MIKIKOさん「そうなんです。『人生はクリエイティブだ。勉強ばかりしてるんじゃなくてもっとアーティスティックに考えろ』なんて言われて。ここですね、起点となったのは。」

大浜編集長「パンチ効いてますね。なかなか日本の大学では聞けなそうなセリフだ(笑)」

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ビジネスパーソンとして多くの「0」→「1」経験を経て、ベンチャースピリッツを養う。

大浜編集長「その後は日本で就職されたんですね。そのままアメリカでの就職は考えなかったんですか?」

MIKIKOさん「私自身は考えていました。当初アメリカでは外資金融と消費財メーカーに内定を頂いていましたが、ウチは一人っ子なので親のこともあり結局日本に帰ることになりました。元々『まだ確立されていない環境下でモノづくりに携わりたい』という思いがあったので色んなメーカーを見ていたんですが、某化学メーカーは当時『商品が売れていない/先見性がない/海外展開できる人材がいない』という状況だったので、『是非ウチに力を貸して欲しい』とのオファーを頂きそちらに就職することに決めました。(笑)」

大浜編集長「キャリアの即戦力採用みたいですね。確かにUCLA卒で日英中韓の4ヶ国語が話せたらそうなりますか(笑)そちらではどんな仕事を?」

MIKIKOさん「海外事業部での新規事業担当だったので、企画〜マーケティング〜営業から子会社の立ち上げなどありとあらゆる業務を経験しました。ここで得たビジネス経験が今のバンド活動にもとても活かされていますね。」

大浜編集長「なるほど、その辺り後半で詳しく聞かせて下さい。」

必然となった社会人引退への出来事

大浜編集長「会社でのビジネス経験は5年との事ですが、その後どういう経緯でミュージシャンに転向したんですか?」

MIKIKOさん「そこは自分の中で大きなドラマがあって、仕事上とても重要なポジションの方に言われた一言がきっかけとなりました。」

「その頃すでに今のバンド活動も並行して行っていたんですが、そこそこメディア露出が増えていくうちに社内でも噂が広まってきていたんですね。そしてある時その方も私のLIVEを観に来て下さって、そこでステージ上の私と普段の私とのあまりのギャップに引いてしまったそうなんです。」

大浜編集長「バリバリのビジネスパーソンが和服でロックですもんね。」

MIKIKOさん「ええ、それで後日その方から直筆のお手紙を頂きまして。『君は社内数万人の中で誰にも真似のできない事をしている。一体ウチで何をしているんだ?君が人生で本当に成し遂げたいことを、胸に手を当ててよく考えて欲しい。いつか必ず君はウチからいなくなる存在だ。』と。その言葉が当時の私に深く突き刺さったんです。」

大浜編集長「それはつまり、MIKIKOさんは音楽の道へ行くべきだというメッセージですよね。」

MIKIKOさん「はい、その話を頂いた後に退職して音楽1本の道へ進みました。これも私の人生の中で本当に大きなきっかけとなった出来事です。」

大浜編集長「本当にドラマみたいですね。」

メンバー集め、楽曲制作から事務所の設立、楽器の開発まであらゆる任務を遂行

大浜編集長「さてここからは現職であるミュージシャンの世界へと話を移すわけですが、メンバーさんはどの様に集めていったんですか?」

MIKIKOさん「ナンパです(笑)」

大浜編集長「え(笑)」

MIKIKOさん「ウチのバンドは私がVoで、後のメンバーは全員東京芸大出身の和楽器パートなんですが、自ら色んな場所に足を運んで、ピンときたらどんどん勧誘していました。」

大浜編集長「新規開拓の営業力ですか(笑)」

MIKIKOさん「これは会社時代の話ですが、ある時集まったメンツで出たイベントで審査員特別賞を頂きまして、その時のメンバーがそのまま今のレギュラーになっています。でも結構大変でしたよ。和楽器に目覚めたのは学生時代ですから、その間ずっとメンバーいませんでしたからね。」

大浜編集長「意外と道のり長かったんですね。では晴れてメンバーも固まり音楽1本で勝負するとなった上で、これまでのビジネスパーソンとしての経験はどの様に活かせていますか?」

MIKIKOさん「やはり数字の面ですね。自分たちが食べていくためにはCDを何枚売る必要があるのか、LIVEに何人集客する必要があるのか。もっと言えば、メジャーとインディーズでの収益構造を比較して、自分たちは敢えてインディーズにフォーカスして攻めていこうといった戦略を決めたりなど。全てにおいて過去の経験が活かされていますね。他にもマネジメント事務所を設立して提携先に運営を委託したり、バンドの音を実現し得る和楽器をある機材メーカーと共同開発したりもしています。」

大浜編集長「楽器の開発もするんですか?!ストイックですね。。」

MIKIKOさん「和楽器は本来ロックバンドの音を担うために作られてはいないので、既存のままではどうしても自分たちの求める音を100%実現できないんです。なのでそこは新たに創造する必要がありました。和楽器って本当に繊細で、他の楽器との調和が素晴らしいんですよ。主張しすぎずそっと寄り添う様な、まさに日本人の特性を表している気がします。」

大浜編集長「確かに琴の音など気品がありますもんね。今では正月位しか耳にする機会がなかなかありませんが。しかしミュージシャン自ら事務所まで設立するとは、まるでYOSHIKIですね。」

MIKIKOさん「最初からミュージシャン1本だとどうしても見えない世界というか、特にお金に対する意識はなかなか養えないと思いますので、そこを私たちはちゃんと自分たちで数字や戦略を考えて動いていく事によって『職業として食べていけるミュージシャン』になれているのだと思います。」

バンドの方向性、音楽文化における和楽器の現状

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大浜編集長「ではそろそろMIKIKOさんのバンド『AKARA』自体のお話を。コンセプトは『和×ロック』だと思いますが、具体的に狙っているターゲット層や、バンドとして伝えたい世界観などはありますか?」

MIKIKOさん「明確なターゲットっていうのは決めていないですね。実際私たちのLIVEに来てくれる人たちって年齢・性別もバラバラで、私と同世代のOLさんから、孫を連れたおばあちゃんまで観に来たりしますよ。」

大浜編集長「おばあちゃんも?!」

MIKIKOさん「はい、年配の方々は和楽器に注目されてタオルを振っています(笑)小さな子達は私たちのパフォーマンスを楽しんでくれていますね。そして同世代の女性の方々には私の会社時代の経験からくる歌詞に共感してもらっています。比率としては社会人がメインですね。」

大浜編集長「そうなんですね、思ったより意外なファン層でした。曲のテイストやバンドとして発信しているメッセージなどはいかがですか?」

MIKIKOさん「バンドとして伝えたいことは、『伝統を重んじながらも新しいことに挑戦していく』といったことですね。日本の楽器の奥ゆかしさ、他の楽器との調和には独特の良さがあります。また、ウチの笛奏者は東京芸大最若手の伝統奏者で、彼の後輩が入ってきていないんですよ。なので、単に和楽器の良さを伝えたいというだけではなく、このままでは日本の和楽器文化が衰退するといった問題意識も持ちつつ活動に取り組んでいます。

大浜編集長「10年後継者が入ってこないんですか?!和楽器文化にそんな現状があったとは。。でも確かに今敢えて笛(和楽器)の道へ進もうというきっかけがないですもんね。。」

MIKIKOさん「はい、私たちもそれは分かっていて。単に和楽器で音楽をやるだけでは世に広めることができないので、キャッチーなメロディとロックなテイストを盛り込んでいます。ちなみにAKARAは海外展開を狙っていますので、私がアメリカ育ちなこともあり曲調はアメリカンロックな裏表紙・変拍子が基本です。なので表拍子が基本の日本人には若干ノリづらく、むしろ外国人受けが良いんですよね(笑)」

大浜編集長「なるほど、音色に和を取り入れつつもベースの音楽は世界向けに作られていると。IQ高いチームだけあってやはり緻密に考えられていますね(笑)一連の話を聞いていて思いましたがマーケット感覚をしっかり持たれていますよね。」

社会人になってからでも音楽の道は進める。結果が出なければまた戻れば良い。

大浜編集長「最後に、音楽ってやはり皆どこか『趣味、儲からない』といったイメージがあると思っていて、でも周りを見ていると『それでもやっぱり音楽で生きていきたい』というオーラがぷんぷんな人が少なくない気がします。ただそこには『せっかく安定した仕事に就いたんだから今更この立場は離れられない』といった思いもあるんでしょうね。社会人経験を積めば積むほど。僕はまぁ初めからそういう環境にいないのでやりたいことがあれば、今もこうして音楽メディアの運営なんかさせてもらっていますが、上記の様な人たちにMIKIKOさんから一言メッセージなどありませんか?」

MIKIKOさん「そうですね。社会人になってからでも遅くはないと思うので、『諦める』位ならチャレンジした方が良いと思います。社会人になってから勝負するメリットとしては2つあって、ある程度まとまった資金が使えるという点と、そこそこのビジネス経験を積んでいるなら『音楽で稼ぐ』ための戦略も立てられるといった点でしょうか。チャレンジしてたとえ無理だったとしても、そこからまた社会人に戻ることはできますから。私自身、今のミュージシャンとしての自分に至るまでの人生に無駄なことなんて1つもなくて、海外育ち・学生生活・ビジネス経験とそれぞれのフェーズでの出来事が全て繋がっているんですよね。人生は自分が思った方向に進んでいくものだと、強く思います。

大浜編集長「有難うございます。そうですよね。僕の後輩兼元同僚もビジネス界から飛び出て世界をギタ一本で旅するバガボンドになっていますが、ちゃんと生きてますもん(笑)本気でやれば何とかなるもんですよ。ということで、読者の皆さんも人生勝負してみてはいかがですか?あ、ちなみにMIKIKOさんMyuu♪で恒例の質問なんですが、MIKIKOさんの好きなアーティストと初めて買ったCDは何ですか?」

MIKIKOさん「好きなアーティストは断然L’Arc〜en〜Cielで、初めて買ったCDはB’zの『BLOWIN’』!」

AKARA Information

MIKIKO MORI 公式サイト
AKARA 公式fbページ

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Tak Ohama

Tak OhamaMyuu♪ 編集長

投稿者プロフィール

中学からX JAPANやL'Arc〜en〜Cielにハマり、高校からバンド(ギター)を始める。大学ではドラムに転身し、HR/HMに没頭。在学中よりバンド仲間とITベンチャーを経営し、その後エンタメ事業を手がける会社「Cowboy」を別途立ち上げネットTVなどを活用したアーティストPRに従事した後、音楽×ライフスタイルメディアの「Myuu♪」をリリース。

<好きなバンド・アーティスト>
[邦楽]:X JAPAN/L'Arc〜en〜Ciel/LUNA SEA/WANDS/T-BOLAN/TUBE/BOOWY/矢沢 永吉/BABY METAL
[洋楽]:ANGRA/SlipKnoT/Dragon Force/Dream Theater/

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